このページでは、相続放棄の流れと、つまずきやすいポイントを弁護士が解説しています。
また、裁判所のHPを見ただけでは一見わかりにくい必要書類について、相続順位ごとに分けた必要書類リスト、必須の必要書類である戸籍の取得方法の説明も用意しています。
このページで分かること
相続人(相続を受ける方)が、相続による権利義務の承継の全部を受けないという意思表示をすることを言います。
相続による権利義務の承継は、被相続人(亡くなられた方)の死亡と同時に必ず発生しますので、その承継を受けないためには、必ず相続放棄を行う必要があります。
相続人の範囲については、第一順位が被相続人の子ども、第二順位が被相続人の直系尊属(父母、祖父母等)、第三順位が被相続人の兄弟姉妹であり、先順位の相続人が全員いない(相続放棄した場合を含む)場合に、後順位の関係にある方が相続人となります。
また、被相続人に配偶者(夫・妻)がある場合には、常に相続人となります。
先順位の方が被相続人より先に亡くなっている場合に、その子どもらが相続人となる場合もあります(代襲相続)。
先順位の方がいる場合、あなたは、まだ相続人ではないので、相続放棄はできません。
被相続人の生前には、あなたはまだ相続人ではないので、相続放棄はできません。
先順位の方がいないことが明らかであるなど心配があれば、確認した方が良い場合もあると思いますが、自ら積極的に確認する必要はありません。
先順位の方の不存在、相続放棄などで、自身が相続人になっていることが後から判明した場合には、そのときが、後述する「自己のために相続の開始があったことを知った時」となります。
残された配偶者が親権者として、未成年の子どもの相続放棄手続きをすることとなると思われますが、配偶者と未成年の子どもとは相続において利益相反の関係にあるため、まず配偶者の方が相続放棄されてから、未成年の子どもについても相続放棄されることを求められることが多いです。
可能です。ただし、それぞれに相続放棄申述書を用意する必要があります。
相続による権利義務の承継を受ける場合には「単純承認」となり、特に手続きを採る必要はありません。
相続できる財産の範囲内でのみ、債務などの責任を負う場合には「限定承認」という手続きを採る必要がありますが、実務上の選択頻度は他の2つに比べて低いです。
家庭裁判所に、「相続放棄の申述」をする必要があります。
「相続放棄の申述」には、①相続放棄申述書と②戸籍などの必要書類を提出する必要があります。
被相続人の最後の住所地を管轄する裁判所に対して申述する必要があります。
※管轄裁判所のリンク
親族等に聞いても、住所がわからないときは、自分の戸籍から被相続人の戸籍まで辿っていき、被相続人の最後の戸籍の本籍地で、戸籍の附票という書類を取ると、最後の住所地がわかります。
原則として、自身が相続人となったことを知った日(条文では、「自己のために相続の開始があったことを知った時」とされています。)から3か月以内にする必要があります。この期間を過ぎると「単純承認」したとされます。
そのような場合には、相続承認・放棄をする期間の伸長申立てが可能です。
事情により、3か月が経過していても相続放棄できる場合があります。この場合は、専門家に相談・依頼されることをお奨めいたします。
3か月以内であっても、被相続人の財産を処分するなど、相続をしたと認められる一定の行為をした場合には、単純承認したものとされ(法定単純承認)、相続放棄できなくなることがあります。
相続放棄をされる可能性があるときは、被相続人の財産処分・債務返済などの行為を行う前に、専門家に相談することをお奨めします。
以下のようなものになります(裁判所から引用)
※裁判所HP掲載の記入例
被相続人と相続人との関係(相続順位)ごとに、以下のとおりとなります。
※必要書類リスト
戸籍(除籍・改製原戸籍)は、本籍地の役所に請求することで取得できます。遠方の役所であっても、手数料を郵便小為替で送付して、郵送で取得することも可能ですので、各役所のHPなどをご確認ください。
本籍地をたどっていくなどの方法については別途説明書を用意しております。
そのような場合には、各相続人で重なっている同じ戸籍については、提出不要(先にしている人がいる場合)または1通(同時にする場合)で足ります。
管轄の家庭裁判所に持参してもいいですし、郵送での提出も可能です。
手続きも申立てに際して、収入印紙800円を申述書に貼る必要があります。
その他、郵便切手を事前に納付する必要がありますが、裁判所によって金額に違いがありますので、管轄の裁判所にお問い合わせください。
相続放棄申述書を提出すると、家庭裁判所でこれを受理するかどうかの審査が開始され、手続きは終了ではありません。
相続放棄できる3か月を経過している、法定単純承認と判断されるなど、相続放棄が認められないこともあるので、これらを調査するために、裁判所から「照会書」が送られてきます(第一順位の相続人が死亡日から3か月以内に相続放棄をし、財産処分などの事情も認められない場合などは送られてこないこともあります。)。
これを返送し、最終的に、裁判所が相続放棄を受理すると終了になります。
その際、裁判所からは、「相続放棄申述受理通知書」が送られてきます。
また、裁判所に請求すれば、「相続放棄申述受理証明書」を取得することも可能です。